Cycle Peugeot Museum

The History of PX10

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○Course route
1903から1983年までの間、サイクル・プジョーはツール・ド・フランスで10回の優勝を獲得している。 この80年間のうち、われわれが入手できる最初期のサイクル・プジョーにおけるトップ・モデルの写真は1920年代後半のP10だ。 その後、1933年にPC10、1951年にPH10、1955にPLX10と続く。ちなみにPC10のCは仏語でCourse(英/Race)を意味する。 プジョーの生産ラインにCourse route(Road race/英)の名を冠する自転車が登場したのは1898年だ。

○PX10E
1973年に起こった第一次石油危機とその前後における世界的なバイク・ブームの影響で、膨大な数のPX10が市場へ供給された。 当時PX10を購入した人々のなかには、ブームに乗せられて一時的に自転車に興味をもった「自称サイクリスト」も少なくなく、 彼らにとってプロフェッショナル・レーシング・モデルであるPX10Eは明らかに手に余る自転車だった。 程なく、彼らの自転車はガレージに放り込まれて埃にまみれることになったが、このことが今日に至ってもなお我々が良質なPX10を比較的容易に入手できる要因になっている。

○販売戦略
サイクルズ・プジョー社がプロフェッショナル・チームを編成し、レースで使用した自転車のレプリカを市場へ供給していた話は有名であり、 後記の通り、選手の記念すべき活躍などがArc-en-Ciel stripe などのデカールとなってフレームを飾った。 が、プジョー社はたんにプロモーションの一環としてレースに参加していたわけではなく、そこは技術発展のための試験場でもあった。 例えば、The Story of the Tour de Franceには下記のようなエピソードが掲載されている。 内容は直接トピックと関係ないが、我々が今日知るプジョー・バイシクルが過酷なレースを通じて蓄積されたノウハウと技術改良によって作られているということを示唆する貴重な記事である。 なお同書には、ツール開始以降度々変更されたルールに従って自転車も変っていく様が克明に描かれている。The Data Book と合わせて読むと自転車のルーツが理解できるだろう。

1913年のツールで、チーム・プジョーのユージン・クリストフが峠を下っている最中、フォークが折れてしまった。 当時の規則では、修理に他人の手を借りてはいけないことになっていたので、クリストフは自転車を肩に担ぎ、片手にホイールを持って徒歩で14kmもの距離を歩き、麓の街の鍛冶屋へ駆け込んだ。 幸い彼は錠前屋で金属加工技術を身につけていた為、折れたフォークを自分で溶接することができた(とはいえ、両手が塞がっていたのでフイゴの操作を少年に任せ、結果としてペナルティを科された)。 このエピソードには後日談がある。サイクルズ・プジョーは調査のため折れたフォークを回収したが、調査結果は明らかにされず、フォークもそのまま消えてしまったのだ。 更に「クリストフが車と接触した」という話が出回ったが、これはサイクルズ・プジョーが意図的に流した偽情報ではないかとされている。(要約)

○1967年製PX10のボトムブラケット
6桁のシリアルナンバーの他、Nervexのトレードマーク及びフレーム角度が刻印されている。
 Nervex 59°3061°022F(E?)35  552563

○X伝説のはじまり
サイクルズ・プジョーにおける歴代トップ・モデル・ラインにXの文字が登場したのは1953年のことだ。 この年、サイクル・プジョーは「Serie Inox Grand Luxe」 (特別に贅沢なスティール・セット)という言葉を使って新しいモデル・ラインを紹介している。 「X」が「Inoxydable(仏語)」 /「Rust Proof(英語)」という言葉を表象している点は別の項で既に述べた通りであり、錆びを防ぐため特別な鋼処理が施されたフレームのことを表している。 1953年、サイクルズ・プジョーはこの Inoxdable シリーズについて、2年間は錆びない旨の保証をしている。

追記 「Inoxdable」のより正確な翻訳は「Stainless Steel/ステンレス鋼」、仏語発音は「イノキシダブル」。 したがって「Serie Inox Grand Luxe」は「Grand Luxurious Stainless Steel models/特別に贅沢なステンレス鋼モデル」となる。

写真のデカール 上から、Inoxydable, Reynolds531, Black and White Checkerboard design, Arx-en-Ciel Stripes, Record du monde, Lion on the triangular(PX10/60年代後半より)。

○フレームの特徴
プジョー・バイシクルの一般的な特徴は、緩やかな角度をもつシート・チューブと長いホイール・ベース、それに深く湾曲したフォークである。 これらは未舗装の道路を走行する際の安定性と快適性の確保を目的としていた。
付記1.The Story of the Tour de France の表紙を見れば判ると思うが、初期のツールでは砂利敷の山道を走行していた。
付記2.峠越えはツールの面白みを際立たせる手段であったにもかかわらず、初期のツールでは変速機の使用が禁止されていた。 そのため 選手は後輪ハブ軸の両端に大小のギアを装着し、登りと下りでそれらを使い分けていた。 その後、ツール主催者の間で論議がなされ変速機使用が承認されると、その機能は飛躍的に向上した。 

○Champion du Monde
フランスが誇るプロフェッショナル・ロード・サイクリストLouison Bobetのワールド・チャンピオンシップ優勝(プジョーに乗っていたわけではない)を記念して、レインボー・ライン及びChampion du Mondeのデカールが登場した(1954)。
付記1.70年代までのサイクル・プジョー社は、ナショナリズムからフランス独自の規格を維持し、国産パーツ・メーカーの育成にも努めていた。
付記2.「Record du Monde」というデカールが他にあるが、これはシンプルに「World Record」と訳す。
この頃から、サイクルズ ・プジョーはPLX10にナベックス・プロフェッショナル・ラグの使用を開始した。

○Rainols Tubing
Rainolds Tubing がプジョーに初めて登場した(1958)。

○White and Black Checker Board
チーム・プジョーがはじめてホワイト・アンド・ブラック・チェッカーボード・デザインを使用、一般者向けは1967年(1963)。

○Arc en Ciel
Tom Simpson のワールド・チャンピオンシップ優勝のすぐ後、Arc-en-Ciel(Rainbow) stripeが登場(1965)。

○オリンピック・リング
1964年のオリンピック参加とその勝利の可能性を記念して、シートチューブにオリンピック・リングが用いられた。

○2008.4.16 ずっと探していた60年代のPX10(フル・オリジナル)がやっと見つかり、ニューヨークから送ってもらいました。 到着して驚いたのは、まずそのパッキングの完璧さ、そして自転車そのものの美しさです。 それらは、売主がどれほどこの自転車を愛していたかということを静々と物語っていました。下記は、前所有のマークから届いたメッセージです。

Hello Haystack, I am thrilled that you are pleased with the bike and the packing. I know you will enjoy it, and I am confident that my beloved Peugeot is in a good home where it will be loved. Thank you again for your kind words, Haystack. Please keep in touch. Take care, and ride safely. --Mark

○PX10E made in 1960s Nervex lugs, Simplex prestige luxederailleur, Stronglight 93 crankset, Resina free wheel, Normandy luxe competition hubs, Simplex skewers, Mavic chanpion du monde rims. Mafac dural forge brakes, Ava alloy bar and stem, Lyotard 45c dural pedals, Simplex seatpost, Brooks professional saddle, stronglight competition headset.

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