サイクル・フォリスとBeborex ブレーキ
ある日、アメリカから50年代に生産されたプジョーPLX10が届きました。
レストアの注文ですが、仔細に見てみるとBeborexという見慣れないブレーキが付いており、興味があってちょっと調べてみました(NS-40のブレーキレバーにはBEBOという刻印があります)。
ところが、日本・アメリカどちらのウェブサイトにも情報がまったくない。
これがフランス語の壁というやつですね。
フランス製の自転車や部品に関する大半の情報は英語圏から発信されており、おそらくそれらの大元の情報はフランス語を解するごく限られた人物によって翻訳されたものだと思います。
そうしてまた、英語を解する一部のアジアのサイクリストがそれらの情報をかき集め、自国内へ伝達するというのが常です。
したがって、通常は英語圏に存在しない情報は大抵日本にもありません。
プジョーに関する情報が今日に至っても曖昧模糊としているのもそれに起因します。
つまり、フランス語の壁は世界の人々にとってそれ程高いということです。
とはいえ、それでは困るのでフランスの友人にお願いした結果、下記のようなことが判りました。
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Beborexと酷似した機能と形状をもつブレーキがFrancois-Marcel Follisによってパテントとして登録されており、Follisブランドの自転車に装備されていた。
実物拡大写真1
実物拡大写真2
以下は、Follisの歴史である。
なお、情報源は下記ウェブサイトで、友人が「ANCIENS VELOS LYONNAIS」の管理者に詳細を直接尋ねてくれた。
複数のパテント写真もそこに掲載されている。
ANCIENS VELOS LYONNAIS
Classic Factory Lightweight Cycles
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「Follis」ブランドの創始者は、Joseph (Giuseppe) Follisという人でイタリア人である。
Joseph Follis (GiuseppeはJosephのイタリア語表記)はMorel and Vanaで製造責任者として働いていたが、1910年、アルプスのイタリア側の麓の村 アルピニャーノ(Alpignano) で鍛冶屋を営み始めた。
1922年、イタリアでムッソリーニが権力を持ち始めたのを機に彼はフランスへ移住し、リヨンでサイクル・フォリスを設立、自転車を製造し始める。彼のブランドは品質の良さによってマーケットの信頼を得、口コミで評判が拡がって行った。
Photo Source is "VeloBase.com".
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Josephの息子Francois(1911年伊生まれ、1940年仏国籍取得)は、ダントン通り(Rue Danton)に店をつくり(1938年)、Francoisまたは、Francois-Marcelというブランドを商標登録した。
Josephには2人の息子 Francois(-Marcel?)とMarcel(伊生まれ、1939年仏国籍取得)がおり、商標が長男のみの名前、または兄弟双方の名前のどちらを表象するのかは不明)。
1946年には50名の従業員を擁し、事業は急速に発展していった。
Photo Source is E-bay.
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Follisはまた、フレームのOEM生産も行っており、様々なブランド名で使用されていた。
この当時、プロ選手は自身の信頼するビルダーにフレームの製造を依頼し、出来上がった製品にスポンサー名を貼り付け、あたかもフレームがスポンサーの製品であるように見せることを好んだ。
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この他、クラポンヌ(Craponne)にも工場を設立し、こちらでは主にモペッド(ペダル付きバイク)やオートバイを作っていたようだ。
1950年代のピークには、後者の工場で250名の従業員を抱え、1日100台のオートバイを生産していた(1959年にオートバイの生産を中止し工場は転売された)。
Photo Source is "Art, Culture and history images".
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Follis は自転車のフレームの他、ディレーラーやシフトレバーも製作していたようであるが、Beborexブランドのブレーキはサヴォア(Savoire/ Lyonの東側)という町にある他のメーカーによって作られていたようだ。
ただ、Beborexと同じメカニズム・形状をもつブレーキがFrancois-Marcel Follisの名によってパテントとして登録されており、これについては、FollisがBeborexのブランド名かメーカーそのものを買収したのではないかと推測されている。
しかし、パテントに描かれたブレーキがFollisによって製造されたかどうかは不明。
Photo Source is "Classic Lightweights UK Classic Components ".
The patent documents on "ANCIENS VELOS LYONNAIS"
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Follisはピーク時にプロフェッショナル・チーム(1954年ツール・ド・フランスにおけるジャン・フォレスティエ/Jean Forestierの活躍が有名)を擁し、とくに1945から1950までの間、有名を馳せたとのことだ。
Photo Source is "Cyclo Passion".
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なお、Francoisの娘Myriam FollisはJean-Claude Cholletと婚姻した後、1973年からFollis というブランドをリヨンで再興したとあるが、もはやトップ・ブランドではない。
Photo Source is "Collection maillots cyclistes d'un passionné".
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